Collide (Blackcreek Book 1) (English Edition)

著者：Riley Hart

出版社：Riley Hart

発売日：2013-11-08

カテゴリー：Kindle本

　好きすぎてレビューするのが難しい作品です。Gay-for-you(ノンケがゲイに目覚める話）、Gay-virgin(初めてのゲイSex）、Friends-to-lovers(友達から恋人へ）は全部好物ですが、それまで男に惹かれる自分を頑なに認められずにいた登場人物が初夜？からノリノリすぎると「ちょっとそれはどうよ」と醒めてしまいます。あと、初Sexのあとキャラが変わりすぎるのも…。Riley Hartの”Collide"はその部分、「ノンケの男がなぜ男に惹かれていくのか」を丁寧に描いた作品です。

　舞台はコロラド州の小さな街Blackcreekです。Noahは浮気をした恋人と別れた後、子どもの頃住んでいたBlackcreekを再び訪れ幼馴染のCooperと再会します。CooperとNoahは10歳の時にフットボールをとろうとして空中衝突したことがきっかけで親友になりました。明るくて、ふざけてばかりのCooperがただ一人心に秘めた傷―火災から両親を助けられなかったこと―を分かち合えたのはNoahでした。Noahもまた、諍いが絶えない両親と共に各地を転々とする生活に疲れCooperと一緒にBlackcreekで暮らしたいと願うようになります。しかし、ある日Noahは両親に連れられて急にいなくなってしまいました。十三年ぶりに会った２人はお互いの変貌とそれにもかかわらず惹かれる気持ちに戸惑います…。

　懐かしいBlackcreekの街をちょっと感傷にひたりながら歩いていたNoahはいきなりCooperのトラックにひかれます。少年の時の出会いは空中衝突、成人したら交通事故。ごついです。この物語の魅力は男と男のぶつかり合いの熱や音まで伝わってきそうな丁寧な描写にあります。Cooperは消防士、Noahは元軍人の家具職人、２人の余暇は家のリフォーム工事、テレビはスポーツ番組、食事はデリバリーピザ、とまさに男！ですｗ

 　Riley Hartさんは男の身体の魅力を描くのが実に巧みです。BDSMとかおもちゃとかは出てきませんが、NoahがCooperを少しずつ導いていく度に、スタンダードな行為がこんなにエロくていいのかー、とドキドキします。

　Friends-to-loversで難しいのは、「なぜ友達として見られなくなったのか？」の描き方だと思います。本作の場合、【十三年間の空白】という設定がきいています。NoahとCooperにとって少年時代に分かち合った「ほかの誰も知らない心の傷」は変わりありませんが、成人した男としてのセクシュアリティは新たな挑戦です。（ちゃんと服を着なさい、とは思いますがｗ）

　コロラドの小さな街でのGay-for-you、家族との困難な関係という点はMarie Sextonさんの『ロング・ゲイン』と共通しますね。Collideの方がダークでエロ多目です。丁寧なエロ、男同士の熱いエロが好きいなあなたにどうぞ！…いったい何回エロとタイピングしたのか…

Baked Fresh (Portland Heat)

著者：Annabeth Albert

出版社：Lyrical Press

発売日：2015-04-14

カテゴリー：Kindle本

　Annabeth AlbertのPortland Heat２作目。Delivered FastのLanceのVicと、彼のボランティア仲間Robinのお話。やはり年の差カップル（Vic３５歳、Robin２３歳）、Delivered Fastより複雑な事情を抱えた２人の物語です。

　Vicは意志が固いので有名です。金融の仕事をリストラされたのをきっかけに３０代で料理学校に入りいまではケーキのデコレーションで店のオーナー（この話の時点ではVicはまだ職人です）やお客に高く評価されるまでに。もともとは熊系大男だったのが、父・伯父そして年齢の近い従兄を心臓発作で失ったことをきっかけに外科手術（Lap Bandというらしい）で５０キロ弱減量を果たし今もジムで鍛えています。そんなVicに欠けているのはロマンス。ということで、ずっと片思いしていたRobinと付き合うことを「今年の挑戦」にします。

　RobinはVicの店が売れ残りのパンを寄付しているＮＰＯのボランティアです。Robinは熱心なボランティアで、特に十代の薬物依存の少年に深く思いを寄せています。去年までVicには同年代のボーイフレンドがいたのですが、手ひどい別れを経て今はもう誰とも付き合いたくない、と宣言しています。この嫌なボーイフレンドからRobinをかばうためにVicが彼氏のフリをしたことがきっかけで２人の仲は急接近していきます。自分を踏み台にしてくれていい、と言いそれを行動で示すVicのやさしさにRobinはメロメロに。しかしRobinが目をかけていた少年Zachの死をきっかけにRobinは二人の関係に自信を失い…。

　MMには米国の社会問題が反映されていることが多いように思います。本作の場合は若年ホームレス。特に、LGBTの少年少女が家庭から放り出されて行き場を失い、生活費をかせぐために売春せざるを得なくなったり、つらさを紛らわせるためにアルコールや薬物依存になるケースが多いようです。２人がボランティアしているNPOは炊き出しをするだけでなく、ホームレスのシェルターや依存回復プログラム（NAやAAなど）を運営しています。Robinは裕福な家の出身ですが若くして薬物依存になり、家を飛び出し、３カ月ホームレス生活をしました。その間、人に言えないようなこともした、と後悔するRobinにVicは"turn tricks, eh?"と言います。このturn tricksは「お金や麻薬のために身体を売る」という意味だそうです。前のBGはそのことでRobinを見下しましたが、Vicは「自分も人に言えないことをいろいろやってきたから」とRobinの過去を受け止めます。

　VicとRobinのエロはかなり濃厚です。というのは、Robinの最大の悩みは薬物依存を断ってから「なかなか射精に至らないこと」。自分はいいから…というRobinをあの手この手を駆使して癒していくVicがエロ親父大人です。濃い目のエロがお好きな方、ぜひどうぞー。

　主役CPは好感が持てるし、二人の背景もきちんと描けているのだけれど、RobinとVicの衝突～仲直りのところがいま一つ納得がいかない気がしたのが残念な点かなー。

Annabeth Albertの「Portland Heat」シリーズの

Delivered Fast (Portland Heat)

著者：Annabeth Albert

出版社：Lyrical Press

発売日：2015-05-26

カテゴリー：Kindle本

　Annabeth Albertの「Portland Heat」シリーズの3作目、30代半ばのカフェのオーナーChrisと大学4年生Lanceの年の差恋愛ものです。

　Portland Heatは西海岸オレゴン州Portlandを舞台にした中編シリーズです。ポートランドはというと個人的にはU.K.ルグィンのイメージなのですが、このシリーズに出てくるポートランドは「ヴェジタリアン、お洒落なカフェ、環境にやさしい」感じの街です。

　お勧めの点は主役カップルがどちらも真面目で健気で可愛いこと。Chrisはカフェの共同経営者で恋人だった男性と別れてから仕事一筋。疲れていても手に怪我してもお店は休まない。Lanceはイタリア系大家族の長男で誰からも愛されるキャラだけれど、理学療法士になる夢をかなえるために大学/バイト２つ/弟妹のお守に毎日頑張っている。

　二人の出会いは、パンを配達にやってきたLanceのお尻にChrisが見惚れたことから。Chrisはもちろん、こんなピチピチの若い子は見るだけ、eye-candyだと諦めているのですが、Lanceにぐいぐい迫られて「Lanceが大学院に進学するためにポートランドを離れる8月まで」の【オマケつき友達(friends-with-benefit）】になることを承諾します。最初はクラブ大好きな典型的な若い子、と思っていたChrisを知っていくにつれ、ChrisはLanceの夢を応援しようと保護者のようにサンドイッチを作ってあげたり、迎えにいったりするように。ラブラブな2人だけれど、大学院合格の通知が到来する時期になって決断を迫られます…。
　
　MMに主役CPの衝突はつきものだけれど、この話でも２人は衝突して一度は別れます。このプロセスがあまり非現実的だったり、ワガママすぎたりすると個人的に萎えますが、この話の場合はどちらの言い分もキャラの性格上納得がいくものでした。このシリーズの中では一番好きかも。

　そしてこの話を読んで気が付いたこと…年の差ロマンス（May/December Love)好物かも…